そして、私の方を見て、

「俺もお腹空いてきちゃったな。」

と言った。

なんだかものすごく恥ずかしいんですけど!

「す。すみません。お弁当のにおいまき散らして・・・」

私は思わず首をすくめて、その男性に謝った。

「いいえ、俺もちょうど食べようと思っていたんですよ。」

そして、その男性は茶色い包みからおにぎり三個と唐揚げを出してきた。

うわ。

なんかまさに独身男性がチョイスしたって内容。

その男性は、そのまま、私の存在なんか気にせずに、おにぎりにがっつき始めた。

ま、その方が気楽だわ。


私も残りのお弁当をきれいに平らげると、急に睡魔が襲ってそのまま眠りこけていった。


どれくらい寝ていたんだろう。

耳元で、「すみません。」という声が聞こえた。

重たいまぶたをそっと開けると、隣の眼鏡の男性が間近に見えた。

すぐに我に返る。

「は、はい!」

慌てて、姿勢を正して男性の方を向いた。

「あの、終点ですけど。」

「へ?」

窓の外を見ると、『博多』の文字が飛びこんで来た。

「私ずっと寝てたんだ・・・ありがとうございます。」

「いえいえ。気をつけて。いい旅を。」

その男性は優しくほほえむと、私の前を通って、そのまま新幹線を降りていった。


ふぅ。

ついちゃった。


時計を見ると、22時少し前だった。

予約している駅前のホテルにとりあえず向かう。

明日に備えて、今日はしっかり寝なくちゃ。

帰りの新幹線では、私はどんな気持ちで乗ってるんだろう。

そう思うとどきどきが破裂しそうだった。