チケットをとってから、あれよあれよと日々が過ぎていき、とうとうその日が来た。

金曜日の夜とだけあって、新幹線のホームはごったがえしていた。

18時15分発。

チケットの席番号を確認して、乗り込む。

あえて通路側を指定していた。

だって、一人なんだもん。

トイレ行くとき、窓際だったら気を遣うじゃない?

この年にもなって、一人で新幹線に乗るなんて実は初めてだった。

今までは友だちや家族と一緒だったから。

だから、なんとなく落ち着かない。

そうこうしている間に新幹線は動き出した。

窓際のお隣はまだ空いたまま。


乗る前に買ったお弁当を早速開く。

お隣さん来る前に食べといた方がいいよね。

さて、割り箸を割ってご飯をほおばろうとしたそのとき。

「すみません。」

斜め上の方で低音の声が響いた。

顔を上げると、サラリーマン風の男性が申し訳なさそうに軽く頭を下げた。

あ。

窓際の席の人だね。

来るの遅いっつうの。

心の中で舌打ちしながらも、顔は笑顔を作って前を通りやすく空けてあげた。

その男性は席に座ると、私のお弁当をちらっと見やりながら、

「せっかくのご馳走食べようとした時に、申し訳ありませんでした。」

と言った。

「いえいえ。」

恥ずかしい-。

そういうこと、言わないでほしいよね。

余計気まずいじゃない。