「本当は会って話したかったけど顔見たらきっと僕の決意もにぶっちゃうから。」

「決意?」

「もう二度とハルとは会わないっていう。」

そうだね。

もう別れてしまったんだもん。

そういうけじめはいくら大人の関係でも必要だって思う。

「ま、もし僕が日本に戻ってきて、偶然ハルが前から歩いてきた時くらいは声かけさせてもらうけど。」

「そうだよね。それで無視はあんまりでしょ?」

不思議ととても柔らかい気持ちで笑っていた。

「最後にハルの笑い声が聞けてよかったよ。本当にありがとう。元気で。」

「ありがとう。体に気をつけて。」

そして、静かに電話は切れた。


ナオ、本当にありがとう。

あなたと出会えてよかった。

きっと私の人生に意味のある時間をくれていたよ。


タツヤの住所が書かれた紙切れを、もう一度手にとる。

「行こう。」

私の気持ちを伝えに。