もう私は何も言ってはいけない。

そんな気がした。

「ハル、僕にも一応男としてのプライドがあるから、これ以上の慰めは必要ないよ。」

「・・・うん。」

「今までありがとう。」

「ありがとう・・・。」

「ハルの幸せを祈ってる。元気で。」

「ナオも。」



そして、電話は切れた。

終わった。

終わってしまった。


不思議と涙は出なかった。

ナオは、あまりにも潔い言葉で、私との別れを伝えていた。

今までナオと付き合っていたことが、夢のように感じられるほどに、ナオの言葉は私の余韻を引きずることを拒んでいた。

でも、そういうことができるのもナオだけだと思ったし、それがナオの最後の優しさだったと感じる。


振り返ると、ミユが神妙な面持ちで立っていた。


「大丈夫だった?」

私は笑ってうなずいた。

ミユはそっと私を抱きしめた。