自分にはなすすべがない状態だった。

タツヤが辞めていく背中をじっと声を殺して見つめるしかできなかった。

そんな自分がはがゆい。

私はタツヤにもっと何か言わなければならなかったことがあるはずなのに。


その後、タツヤのいない社内は、普段通りの活気を取り戻していた。

でも、私には妙に静かに思える。

その、たった一人の存在が、こんなにも大きかっただなんて、今更気付いた。


私にとって、タツヤは・・・。


こうして、土曜日の朝を迎えた。

ミユとの待ち合わせの時間が近づく。

そう。

今日はナオの御両親と会う日。

着ていく服を、ミユが一緒に見繕ってくれる予定だった。

本当は、ナオの御両親と会うなんて気分じゃない。

ナオの顔を見るのさえ、辛い状態だった。

なのに、キャンセルできない自分がいる。

馬鹿だよね。

本当に。