バックミラーごしに、少し冷ややかなタクシードライバーの視線が突き刺さった。

な、何見てんのよ。

年上女が年下男の頭を肩にのっけてうれしがってるとでも思ってるのかしら!

必要以上な被害妄想。

っていうか、私が意識しすぎ?!

ドライバーの視線を受けて、あわててタツヤの肩をそっとつかんで元の体勢に戻そうとしたその時。

ガクン!

タクシーがまたもや大きく揺れやがった!


タツヤが私に覆い被さるような状態になり、私の右ほほのすぐ横にタツヤの顔がきた。

タツヤはゆっくりと目を開けた。

寝ぼけ眼のまま、私を見てにんまり笑うと、そのまま私をぎゅっと抱きしめた。


ち、ちょっとー!!!!!

さすがに、こわくてバックミラーを見ることができない。

「た、タツヤ!寝ぼけてないで、しっかりして!」

小声でタツヤに言った。

「ん?」

タツヤはようやく私を抱きしめた腕をゆるめて、体をゆっくりと離した。

そして、ものすごくあわてた顔をして前髪をかき上げる。

立場逆転。

正直安堵。

「あ、すみません!うわ、俺、はずかしー!」

タツヤは両手で自分の両ほほを押さえた。

見たことのないタツヤの慌てぶりに思わず吹き出した。

「ちょっと、飲み過ぎたんじゃない?」

少しだけ意地悪な顔をして言ってみた。