タツヤが退職すると決める前に、一度でも会いたかった。

その選択が本当に正しかったのか。

私にはやっぱりわからない。

ただ、タツヤの立場を考えると、そうせざるを得ない状況だったのかもしれない。

だけど。

辞めてしまうの?

辞めて一体これからどうするの?


このまま、タツヤが会社に戻るまで待っておこうかとも思ったけど、さすがにそこまで踏み込むことは、私にはできないと思った。

私よりも、今はタツヤの方がずっとずっと辛くて、誰かと話するのすらしんどい状況だと思うから。

アユミの言うように、明日、もしくは明後日、少しでも話ができたらいい。


できるかどうかわからないけれど。

少しだけでも。


私の頭の中がぼんやりと霞がかかったようだった。

今、何も思いつかない。

どんな言葉も表情も。

ただ、今すぐにでもタツヤに会って、その心細い背中を抱きしめたいと思った。

それくらいしか、今の私にはできないって。