結局、その日、タツヤの姿は見えなかった。

そして、メールの返信もなかった。

不安な気持ちのまま、帰宅するしかない私。

なんとなくまっすぐ帰りたくなくて、駅前の書店に入った。

とりあえず雑誌コーナーの前まで来ると、聞き覚えのある声が後ろからしてきた。

振り返ると、アユミと、飲み仲間のユウタだった。

「あ、アユミ。」

今はアユミの姿にすがりたい自分がいた。

「ハルナ!ちょうどよかった。」

アユミは私の方へ駆け寄ってきた。

「タツヤのこと、何かわかった?」

自分でも驚くほどなりふり構わずアユミに聞いていた。

アユミの気持ちを考えたらそんなことできるはずもなかったのに。

「うん、帰り、ユウタと一緒になったんだけど、ユウタから色々聞いたよ。」

アユミの真面目な表情から、事の深刻さが伺えた。

後ろに立っていたユウタも心なしか顔がひきつっていた。

「俺も、心配になってタツヤに連絡とってんだけど全然連絡つかなくてさ。どうも今は上司と上海にいるらしいんだ。」

「そうなんだ。」

とりあえず、居場所がはっきりしたことに安堵する。

「タツヤと同じ部署に同期がいるから聞いたんだけど、やっぱかなりまずい状況らしくてさ。始末書もんだって。しかも、上司もその責任とらないといけないらしくて、あいつとしたら一番きつい状況だよ。」

ユウタは長いため息をついた。

三人の間に重たい空気が流れる。