「赴任する日が決まった。」

そんな私にナオは静かに言った。

「え?いつ?」

「ちょうど一ヶ月後。」

「え?早まったんだね。場所・・・は?」

「ニューヨーク。」

ニューヨーク・・・。

すご。

映画でしか見たことがない、巨大な都市。

そんな世界で、ナオは世界と渡り合おうとしてる。

尊敬のなにものでもない。

私には広すぎる世界。

「それでさ。」

ナオは言葉を選びながら話し出した。

「もし、ハルの気持ちが僕とのことを前向きにとらえているなら、赴任前に一度両親に会ってもらいたいんだ。」

ドクン。

急に心臓が大きく脈打った。

このドクンは、どういうドクン?

選択を迫られている。

もう時間がないんだ。

すぐに返事ができない自分に、心の中でため息をついた。


「まだ、早かったかな・・・?」

ナオの声は小さかった。

ナオの顔は見れなかったけど、きっと前みたいに不安そうな、そして寂しそうな笑みを浮かべてる。

その顔は私の気持ちを引きずっていく。

自分の明確な意志とは裏腹に。