タツヤの背中を見つめながら、すぐにでもその背中に抱きつきたい衝動を抑えながら。

自分の気持ちにまっすぐになれない自分。

色んな思いや言葉にセーブがかかる現実。

私は一体、何を恐れてる?

ナオを手放すのがそんなにも怖い?

幸せになれるであろう現実を手放すことが・・・。


それとも、愛してくれてるナオを傷つけることが怖い?

たとえ、タツヤを傷つけたとしても?


ここまで、自分の衝動を抑えてしまうってことは、

私自身がナオを選んでいるということなんだろうか。


ミユ。

私はどうすればいいんだろ。

今、この時を逃したら、タツヤの手をもう一度握ることはできなくなるんじゃないの?

気分が悪くなるほどの焦燥感に胸が苦しくて破けそうになる。


気がつくと、目の前が明るく開けていた。

「ねーさん。さ、乗って。」

いつの間にか大通りに出て、タツヤがタクシーを拾ってくれていた。

無力感とともに、タクシーの椅子に倒れ込むように座った。

タツヤは、タクシードライバーに私の住んでいる町名を告げた。

タツヤにタクシーで送ってもらうのって、これで三回目。

三度目の正直。

これでおしまい・・・。