「やっぱ俺じゃダメ?」

ダメじゃない。

そういうんじゃない。

私はうつむいて首を横に振った。

「きっとねーさんの彼氏って、ものすごく魅力的な人なんだろうな。」

タツヤは大きく伸びをしながら、自嘲的に笑った。


「家までタクシーで送るよ。」

「え?」

「このまま朝まで一緒にいたら、俺どうにかなりそうだし。ねーさんにとっても、今日は帰ってゆっくり休んだ方が絶対いいって。」

タツヤはそう言いながら、少しだけ笑った。

なぜだか、泣きそうになる。

どうしてそんなこと言うの?


どうして、そんな風に思うの・・・?


タツヤは私の手を握って、ベンチから引き上げた。

その手はすぐに離れた。

「いこっか。大通りまではすぐそこだから。きっと金曜日はタクシーもたくさんあると思うよ。」

タツヤはズボンのポケットに両手を入れて、歩き始めた。

私は、妙に空虚な気持ちを抱えて、静かにタツヤの後に続いた。