タツヤのその手は思っていたよりも厚みがあって、大きかった。

少し汗ばんだ手のひらが冷たい。

「ねーさん、今日はやけに積極的じゃない?」

タツヤは目をそらしながら、私の手をぎゅっと握った。

「何か感じる?この手から。」

依然、私と目を合わさないタツヤを見上げて聞いた。

「どうだろ。俺は全然いやじゃないけど。ねーさんはどうなの。」

「気持ちは悪くない。」

「なんだそれ。そういう表現って、言われてあんまりうれしくないよな。」

タツヤは苦笑しながら、ようやく私と視線を合わせた。

薄暗がりの中、タツヤの目は都会の明かりに反射してキラキラして見えた。

「あそこ、ベンチが空いてるけど、座る?」

タツヤは斜め右にあるベンチを指さした。

「そうだね。風も気持ちいいし、ちょっと座ろっか。」

手をつないだまま、ベンチに腰掛けた。

緊張のせいか、つないだ手がわずかにしびれている。

ぎこちなさを感じながらも、その手を離さずにいた。


タツヤが、軽く息をはいた。

「なんか、こういうの、蛇の生殺し状態だな。」

「え?」

「お酒回って、好きな相手と手をつないで、ベンチに腰掛けてさ。何もできずにただじっと座ってるだけなんて、結構きついもんだぜ。」

「そうかな。」

「女と男の性の違い。たぶん、俺の理性がちょっとでも緊張感なくしたら、ねーさん、そのときは覚悟しといてよ。」

つないだ右手から、タツヤの鼓動が伝わってくるようだった。

タツヤの言葉は、私を一人の女性にした。

このまま抱きしめられてもいいって思った。