ナオは、おすすめのフルコースを注文してくれた。

どれもこれも、温かくてお腹を満足させてくれるお料理ばかり。

ナオは、いつもこういうお店に連れて行ってくれる。

間違いなく、普段なら手がでないようなお料理をあえて注文してくれる。

そして、ご馳走してくれるんだ。

ナオには、こういうところにも余裕が感じられる。

ノボルの時は、本当にフィフティーフィフティーで、お互いの誕生日以外はおごったりおごられたりしたことはなかった。

それはそれで気が楽だったんだけど、ナオのこういう態度を見ていると、やっぱりノボルじゃだめだよなぁって。

ノボルごめん!だけどね。

すっかりお腹いっぱいになったナオと私は、お店を出た。

「おいしかったー。いつもご馳走様です。高かったでしょ?たまには割り勘しようよ。」

ナオの返答はわかっていたけれど、あえて言ってみた。

「ハルがおいしかったって言ってくれることが一番嬉しい。ハルには絶対おごらせないよ。僕のプライドが許さない。そこそこお金持ってるから気にしないで。」

少しいたずらっぽく笑うナオに、やっぱり余裕を感じる。

そんな台詞も全く嫌みっぽくなかった。

これもナオの品の良さなんだろう。

辺りはすっかり暗くなり、月が出ていた。

「これからどうしようか?」

ナオがぽつりとつぶやいた。

これから・・・

家に帰る?

それとも、ナオの家に戻る?