ナオは私の耳元でささやいた。

「キスしてもいいかな?」

ドキン。

ええ~・・・

いいんだけど、いいんだけど。

まるで初めてキスをする少女のように心が震えていた。

恥ずかしくて、顔を上げないまま、ゆっくりとうなずく。


ナオはそっと、私の唇にキスをした。

とても優しくて、柔らかいキスだった。


ナオは私の体からゆっくりと離れた。

そして、うつむくとホッとしたようにつぶやいた。

「よかった。」

思わず聞き返す。

「何がよかったの?」

「拒否されなくて。」

ナオはうつむいたまま静かに言った。

前髪のかかったままの目はなぜかとても寂しそうだった。

拒否されるかもしれないって思ってた?

つきあってるのに?

「正直、まだ自信がないんだ。ハルが僕に気持ちがあるかどうか。」

ナオはとても頭のいい人だから、私の微妙な気持ちの動きに気づいていたのかもしれない。

寂しそうなナオの横顔を見つめていると、自分が不甲斐なくて、泣きそうになる。

だって、今はこんなにナオのことが愛しいんだもの。

だけど。

いつもふとした時に思い出してしまうの。

タツヤのことを。