「落ち着かないかもしれないけど、座って。」

ナオは恥ずかしそうに笑いながら、キッチンへ入って行った。

「コーヒー、紅茶、りんごジュースがあるけど、どれがいい?」

キッチンからナオの声がした。

「じゃ、りんごジュース。って、リンゴジュースはいつも買い置きしてるの?」

「あ、うん。好きなんだ。りんごジュース。」

ナオの風貌からりんごジュースが好きなんて意外だった。

でも、いつもスマートなナオからそんな庶民的な部分が見えることは、私にはうれしかった。

身近に感じられるっていうか。


飲み物を持ってきたナオは、ソファーに座る私のすぐ横に座った。

少し近い距離にドキドキする。

二人きりのリビング。

何も言わず、コーヒーを飲むナオに。


何かしゃべらなきゃ、ってジュースをテーブルに置いたその時。

ナオは私の顔をうるんだ瞳でじっと見つめてきた。

そして、何も言わず、私の肩を抱き寄せた。

えー!

こんなに急な展開ってある?!

だって、まだ家についたばっかりなのに。