私は五十嵐の手を握り、歩き出した。
「妃奈――」
五十嵐は驚いている。それでも私は歩くのを止めない。
「・・・私はただ一緒に居てくれるだけで良いです。何もいらない」
握る手に力が入る。こんな事聡志にも言ったことが無い。自然と甘えられる・・・『恋』ではない、もっと別のモノ。
ただ単に寂しさを紛らわせているだけかもしれない。今までの良い子ちゃんじゃなく、自分の醜い部分をぶつけられる相手に――・・・
「――・・・妃奈・・・」
五十嵐は私が掴んでいた手をそっと離し、再び触れると思ったら彼の指が私の指に絡まってきた。