何度も連絡しただろう、着信履歴が何件も残っている。少し躊躇い、ボタンを押した。


・・・1、2、3・・・


「妃奈!今どこにいる!?」


焦った声。久しぶりに聞いた。
仕事では平気だが、なんだか気まずい。昨日の事もある。


「何かご用ですか?」


・・・つい、事務的に言ってしまった。


「――今どこにいる」


「どこって・・・貴方には関係無いです。私の事は放っておいてくださ――」

「昨日、マンションに行った。いくら待っても帰ってくる様子がなかった。今、誰と居るんだ?」


「・・・聡志は一緒じゃないの?九条さんと」


人混みを歩いてるのだろう、ざわめきとそう遠くないところで、聞き覚えのある甘えた声が聞こえる。

黙り込む聡志に苛立った。私が愛した彼はこんな人だったのか。いや、違う。誰からも慕われ、優しかった彼が好きだった。


いつの間にか涙が溢れていた。携帯を握りしめる手に力が入る。

――泣かないって決めたのに――


するりと頬に指が触れ、涙を優しく拭う。左手で妃奈の腰を抱き寄せる。すっぽりと五十嵐の腕の中に入った。


耳元では聡志の声が聞こえる。