私は彼にお願いした。
「――お願いします・・・」
半分やけになっていた。まさか自ら浮気相手になる、と言う男が現れるとは。
とにかく忘れたい。聡志の事を。酷い女と言われてもいい。
男・・・いや、五十嵐は微笑み、返事の代わりに妃奈の頭を撫でた。
「あの・・・今何時ですか?」
あれからどれくらい時間が経ったのかわからない。時計を見たくてもがっちりと抱きしめられ、見ることができない。
「あぁ・・・すぐに夜明けだ」
五十嵐はゆっくり妃奈から離れた。体がだるい。まだ完全に酔いがさめてないらしい。ベッドに横になろうとしたが、五十嵐がいる。
「すみません・・・ベッドを使ってしまって。私はソファーにいるので」
ソファーと言っても、大人が楽々横になれるほど大きい。クローゼットの中に備え付けの毛布があるだろう。
ベッドから出ようとしたら、再び抱き寄せられた。
「・・・寝るぞ」
そのままベッドに横にされ、布団をかぶせられた。これでは悪いと思い、ベッドの隅にいこうとしたが、向きを変えられた。
腕枕をされており、すぐ目の前に五十嵐の顔がある。すでに目は閉じられていた。