「…お嬢様?」
俺は一瞬理解に苦しんだ。
でも、すぐにその言葉を理解して。
でも、そんな言葉がお嬢様から出てくるとは思いもしなかった。
だから今こうして、戸惑う事しか出来なくなっている…。
「ごめんなさいね?
私、本当は言うつもりなんて無かったの。
でも、いきなりもう会うのは今日限りだなんて言うから…」
「だから…」そう続けてお嬢様はこういった。
「最後くらい、私の本音を高野さんに伝えたかった。」
「お嬢様…」
こんなにも、人の言葉が身に沁みた事は無かった。
込み上げている物に気づくことも無く、俺はこう返した。
「ありがとうございます。」
その、たった一言だけ。
そしてこの日の夜、俺は屋敷を出た。