「高野さん…」

「お嬢様?今日はもう帰りましょう。」

「そうね♪じゃぁ、また明日ね♪」



お嬢様は友達に軽く手を振って微笑むと、俺の隣に立った。


お嬢様の長く綺麗な髪が、今日は2つに縛られていた。



「髪…お似合いですね。」

「本当っ?ありがとう♪」



表向きだけの心も無い言葉に素直に喜ぶお嬢様。


瞬間俺は、なんだか良心が傷つけられるような感覚に襲われた。


罪悪感?


そんなモノ、俺が感じるはずが無い。




そんなこと、ガキながらに思っていたことを今でも覚えている。




「また明日…友達ができると良いですね。」

「えぇ。友達は多い方が楽しいもの♪」



無邪気に喜ぶお嬢様を横に、俺は車に乗った。


もちろん、お嬢様を先に乗せて。



「お嬢様…私(ワタクシ)の事…奥様からお聞きでしょうか?」

「…? 何のこと?」



まだ、聞いてないんだな…


俺の移動の話。





「お嬢様には、伝えなければと…。
私…移動になりました。」