黒い物体は、それに答えようと一生懸命口を動かす。

「ゆ……ゆ、う」

「えっ!?」

「ゆ、う。ゆう」


 ――ゴオオオオオオオオオオッ!!


「きゃぁぁっ!」

 はっきりと聞き取れたその瞬間、突風が吹き荒れた。

 思わず目を瞑り、風が止むのを待つ。

「優香!!」

 聞きなれた声がする方向を見ると、秋人がこちらに向かって走ってきていた。

「秋人君!? どうしてここに!?」