目の前にいる黒い物体は、何度見ても不気味な体つきをし、その体を黒いもやが取り囲んでいる。

 表情もいつもと変わらず歯をむき出しにして、笑っている様だ。

 口をパクパクと動かし、何か話している様なのだがやはり何も聞こえない。


「何が、何が言いたいの……?」

 優香はというと、頭の血管がはち切れそうな位の頭痛で限界に達しようとしていた。

 なのに倒れることも無くここにいるのは、もしかしたら何かしら理由があるのかもしれない。


 もちろん恐怖で狂ってしまいそうだったし、出来ることなら逃げたかった。


「言いたい事……あるなら、言って、よ」

 頭を押さえずにはいられない痛みに我慢しながら問いかける。