緊張で震える身体を遠藤さんに向ける。

「もう…遠藤さんとはお付き合い出来ません…。遠藤さんを想ってもいないのに…簡単に返事をした私が悪いけれど…遠藤さんにされた事も怖いの…」

「何言ってんだよ…」

「部屋を荒らしたり、無理矢理……そうでしょう?」

「そんな事言って…他に男が出来たんだろ」

睨む遠藤さんに足が震える。

「そんな…」

「高野に男がいたら諦めるか?」

木下さん!?

見上げた木下さんの顔は遠藤さんに向けられている。


「…高野。ごめんな」

私の肩を抱き耳元でそう囁くと、木下さんの唇が私の唇に触れた。

木下さんの腕の中で何度も繰り返されるキスに頭の芯が痺れたみたいになる。



「俺が高野の新しい男って事。悪いけど諦めてくれよ」

そう遠藤さんに告げる木下さんは私の顔を遠藤さんに見せないように胸に抱く。

私のためにお芝居をしてくれてる木下さんに感謝しつつおとなしく腕に抱かれていると遠藤さんの呟きが聞こえた。


「…わかったよ」



通用口の開く音がして遠藤さんがいなくなると一気に足の力が抜けた。