別に何もない。

あの日以来。

あたしと豪くんには何もなかったのだ。

「ばかねぇー、唯。なんでこのあたしがあんなやつと!」

言ってる側からちょっと顔がほてってる気がする。思わず唯から顔を背ける。

「うふふっ、ごめんごめん。めんごめんご!」

ったく、唯ったらだんだん奇面組に染まってきてる気さえするわ…。

「なんか最近工事多いんだねー」

歩く先には工事現場が道の半分を占拠している。二人で並んで歩いていたのだけど、一列になって歩かなければいけない。

「うちの近くでもやってんのよ、そういえば。ほーんと休みの日なんてゆっくり寝れたもんじゃないわよ」

「千絵は寝すぎよー、昼まで寝てるじゃない」

だっ…だって最近眠れないんだもん…。

という言い訳と共に脳裏に浮かぶのは豪くんの顔。

「あーもうっ!しっしっ!」

何もない頭上をがむしゃらに振り払うと、空想の豪くんはあっかんべーしながらおしりぺんぺんをして空の彼方へ消えて行った。

に!憎たらしい!空想なのに!