「一平!アイス食べちゃったでしょ!」

冷凍庫を開けた瞬間、息が止まるくらいのショックがあたしのからだを駆け巡った。蝉の鳴き声と風鈴の音色が不協和音と化して頭の中に反響している。そして次の瞬間に脳裏を支配したのは、弟の一平の顔だった。

よりによって…。

よりによってよりによって!

大事にとっておいたあずきバーを!

一平のやつぅー!

朝ごはん作ってお洗濯して家の掃除してお庭の草むしりして夏休みの宿題して、全部ぜーんぶ終わらせてからのご褒美としてとっておいたのにぃー!

「な、なんだよ!姉ちゃん!すげー顔して!」

もっ、もー許さないんだからー!

「あずきバー食べたでしょ!一平!」

一平は呆気にとられた顔をしてあたしを見つめている。

「食べてないよ!俺はガリガリ君しか食べないだろ!あずきバーなんてもん食うのは姉ちゃんくらいだ!」