「なぁ、奏!やろーやぁ!」
恭哉が言う。
受験シーズンに入ったというのに焦りっつうもんがねぇのかよ。
「・・・しねぇよ。受験シーズンだろーが」
そっけない返事をして帰りの準備をする。
コイツ、橋本恭哉がいっているのは《バンド》を組まないかってはなし。
「だってさ!ドラムできんの奏しかいねんだよ!!」
俺は恭哉のうるさい声が聞こえてこないようにアイポッドを耳につけた。
たしかに、俺だってさ、バンドやりてぇよ。
でも...俺は二度とバンドをできない理由があるんだ。
―――――――ブツッッッ!!
「ああ?!なにすんだっ…」
いきなりイヤホンをブチぬかれて俺はキレぎみに後ろを振り返った。
「奏、どこ高うけんの?」
そこにいたのは 白井櫂。
俺らとおなじ中3でやべぇほど頭がいい。
ちなみにこいつはベースが弾ける。
「あー…わかんね、若島とかじゃね」
俺が受けようとしてるのは、バカ高で有名な「若島高校」。
「そっか」
「なーあ!バンド・・・」
まぁだゆうか、コイツ。
「しねぇっつってんだろ!」
つい、カッとなって怒鳴ってしまった。
恭哉は「もう、奏なんかにたのまねぇよ!」といって走って帰ってしまった。
「クスクス...恭ちゃん、怒っちゃったよ?」
笑いながら櫂が言う。
それにもっとイライラして俺は櫂を無視って歩き出す。
「なあ、奏?」
「なに」
「雪乃ちゃんは?」
雪乃とは俺の彼女。
告られたから付き合っただけの関係。
「あー、しらね。」
適当な返事をしてアイポッドの曲を変える。