組織内のあらゆるデータをハッキングして、小さくてもいい。何か手がかりを見つけられればと思っていたのだがその考えは甘かったらしい。ここの奴等は隠蔽というのが大好きだ。社内資料に記載されている数年前まで上層部に在籍していた人間さえも、架空の人物らしきものにすべて書き換えられていた。あの頃の上層部のほとんど東雲の人間だったはずなのに。結局何も分からず、何年経っても同じ事の繰り返しで正直気が滅入ってた。


そのストレスから仕事にのめり込み、遊び狂い、女の味を染めた。 本部内でも繁華街へ出ても俺を知らない人間……いや、俺を知らない女なんていなかった。 仕事のパートナーも、遊びのパートナーも、気付いたらアレクトになっていた。もしかしたらこいつに監視されてるのかもしれない。そんな不安を抱えながらも俺達は常に一緒にいた。『存在自体を隠蔽された諜報部隊』と言われていた工作員も俺のせいで隠蔽もなにもなくなってしまった。仕事も最初のうちはスパイやエージェントばかりをやっていたが、今では立派な殺し屋だった。


「今日はどーする!?」
「あー………。今日はめんどくせぇから店でいいやー」
「また店の女抱くの!?」
「だってその辺のだと一度に何人も来るじゃん」
「またそんな贅沢な……。俺にも少しわけてくれよー!」
「半分くれてやってもいいぞ!?」
「別にいいよ。どーせゼファの取り巻きは俺の事嫌がるもん!」
「あ━━━━ッはっはっは!そりゃそうだな!」
「あッッ!お前ムカツク!」
「あははははははは!じゃ。また明日なアレクト!」
「ま………待て。俺も今日は…………」
「真似すんのか?」
「悪いかッッ!?」
「別にー」


たぶん何かで気を紛らわせたかったんだろう。自分の思い通りに行かないむしゃくしゃした気持ちをどこかで発散したかったんだろう。そのままでいればきっと殺しで発散してしまう。それだけは避けたかった。殺し屋が仕事以外で殺しをしてしまえば本当に血を浴びなきゃ生きていけなくなる……。