あ、いる。
近くにいる気がする。
僕は流れ星を見ながら感動のざわめきを発する人たちを後目に、ふらふらと立ち上がった。
雑音のなかに埋もれず、だけど存在感がほとんどない、さっきまでの僕なら聞き逃していたかもしれない、歌声。
詠い人なんて所詮おとぎ話だろうけど、歌を思い出した僕にはただ、その歌が気になって仕方がなかった。
歌というにはあまりにも稚拙な、だけど優しい旋律の儚い歌が。
僕はその声をたどって歩き出した。
どうしても、探しだしたかった。
その歩みはだんだん速くなり、そして、暗い林の中では全速力で。
突然視界が開けた。
そこは、星空。星降る夜空が一面に。
「こんな、ところが……!」
思わず一歩踏み出す。
ここなら、夜空に届きそうで――
いきなり、身体の支えがなくて、前にふらつく。
「……っ!?」
そこは、崖。