空の東が紺に、西が茜色に染まり、一番星が出てきた時間、最初の流れ星が落ちてきた。
「お兄ちゃん見た!? 流れ星だよっ」
咲良ははしゃいで歓声をあげている。
周りの人たちも流れ星を見落とさないようにと一心不乱に空を眺めていた。
僕も空を見上げていた。
だけどすぐに首が疲れて、そのまま芝生の上に寝転んだ。
「……!」
圧巻、だった。
あちこちで歓声が聞こえる。
妹のはしゃぐ声が聞こえる。
父さんの息を飲む声が、母さんの漏らしたため息の音が聞こえる。
だけど、僕はそれらを全部意識の外に追いやって、ただ、この眺めに感動していた。
無数の星が落ちてくる。
耳をすませば星の凛とした澄んだ音が聴こえてきそうだ。
夜空が近い。
手が届きそうだ。あの無数の流れ星を全部掴むことができそうだ。
なんで?
ふと、思った。
どうして身体を全部、大地に預けて見た空はこんなに近くに見えるんだろう。
どうして、この流れ星は人を感動させるんだろう。
どうして皆、星に願い事をせずにはいられなくなるんだろう。
それを思った瞬間、記憶を揺さぶられた気がした。
そして、思い出した。
「……詠い人」
人の願いを詠う者。