「あれ?」
楓は誰かに呼ばれたような気がして振り返った。
「どうしました?」
「誰かに呼ばれたような気がしたんだ」
「誰か?こんなところに人がいるわけないじゃないですか」
幻歌は不愉快そうに声色を低くした。
「それとも、あれですか。そう言って私の気を引こうとする作戦かなにかですか」
怖い。感情や起伏のない声がそうとう怖いです、幻歌さん。
口にだして言ってはいないが、幻歌は心の声まで詠む。当然のように聴こえたらしく、さらに機嫌が悪くなっているようだ。
そのとき、ふいに頭の中にある名詞が浮かんできた。
「ツンデレ?」

右回転とび蹴りなんて初めてみました。

というか、そんなことしても肩から落ちない外套が気になる。
なんにしても、幻歌には冗談が通じないらしい。


と、まあそんなことがあって、幻歌は口もきいてくれず、眼も合わせずで相当気まずい思いをしていた。
妹のことといい、幻歌といい、楓には女難の相がでているらしかった。
とにかく、いつの間にか楓と幻歌の森散策もとい旅が始まっていた。
ところで幻歌はどこに行くつもりなんだろう?