素直にカエル3 ~先生と卒業式~




一通り話し終えると先生はふぅーっと長く息をはいた


私も先生のマネをしてソファーに寄り掛かる


静かな空間に私と先生の呼吸の音だけが響く



「…やっぱり、南の言ってた通りだったんだな」


「本当…。お騒がせな2人だよね」



先生は笑っていたけど、きっとすごく不安だったと思う



自分が関係していたこともあるし、それの背後には私がいて…


たぶん、家で待ってられなかったから私の家まで来ちゃったんだね



「はぁ~。とりあえず、南が戻ってきてくれてよかった」


「何それ?私が陵也とくっつくとでも思ってたの?」


私の質問に先生は苦笑い


「そーゆーわけじゃないけど…。正直不安だった。また南がどっか行っちゃうのかな…とか」



こんな弱音を吐く先生初めて見た


そこまで心配かけてたんだって言う申し訳ない気持ちもあるけど、そんなに愛されてるんだなっていう嬉しさもある



「私だって、美佳が先生にホレたとか言った時、どうしようって思ったよ」



今日はなぜか素直になれる



思ってることがすらすら出てくる



先生は黙ったまま私の肩に腕を回し、グッと引き寄せた






こんなに愛されてるんだから大丈夫だと思う


でもやっぱり不安があった


「私は美佳みたいに可愛くないし、甘えたりも出来ない。だから先生も私なんかより美佳のほうが好みなのかなとか思ったり…」


私が本音を漏らすと先生は笑った


「あのなぁー、そんな南だからオレはスキになったんだぞ?まあ、甘えた南も悪くないけど」


先生はちゅっと軽いキスを私の頬に落とした



「先生が変態だから心配だったんだよ」


「ふふん、オレが興奮するのは南だけだから心配無用!」



くだらないことも、
つまんない冗談も、
先生とだから楽しい


「これからは不安とか悩みがあったらすぐオレに言えよ?」


「えー?頼りないなぁ…」



先生が笑うから、私も笑う


先生が悩んでたら、私も一緒に悩むよ


2人でちょっとずつ強くなれば、きっとまた笑えるもんね



「…くしゅん!」


「ん?南風邪か?」



先生は私のおでこに手を当てる


でも熱なんてない



「…先生、寒く…ない?」


「…南」



これが私の精一杯の甘え



先生がほしいとか


愛してるなんて言えないから




「私…寒いなぁ…」


「そっか。じゃはやくあったまらなくちゃな?」



先生に手を引かれ、向かう先はただひとつ






何度体験しても恥ずかしい


でも先生とだから安心できる



「南…可愛い」


「や…だ……」



たくさんキスして


たくさん触れて



先生の愛を感じる



「…南」


「せん…せ…」



なんだかお互い恥ずかしくて、照れくさい



先生の腕枕にもまだ慣れない



「なんか今日の南エロかったな」


「…っ?!」



先生は私の髪を触りながらニヤリと笑った


「知りません!」


「あ、こら!」


私はバサッと布団を頭から被った


「こら、出てこい!」


「やだー!…あっ」



男の力に敵うはずもなく…


あっという間に先生の顔が見えた



「そんなことしたら照れてる南が見えないだろ?」


「…バカ!」



恥ずかしくて何も言い返せない私に、先生は優しい笑顔をくれる



「こんな変態なオレだけど、これからもよろしくな」



真剣な先生がなんだか可愛くて、私はそっとキスをした


口に出しては言えないけど…



愛してるよ、先生








春休みは波乱ばかりだったけど、なんだかんだ言って楽しかった


先生との絆も深まった…ハズ



「南~!こっちこっち!」


新学期が始まり、私は桜並木を走った



そういえば、1年前はこの道を美佳と歩いたっけ


今はあゆみと理奈の3人で歩いている



「クラスどうかな~?」


「それより担任だろ!田崎がなるといいな?」



あゆみと理奈は桜が舞う中を楽しそうにはしゃいでいた



…担任かぁ


結局先生教えてくんなかったんだよね


まあ先生だったら嬉しいけど…


私達は急ぎ足でクラスが貼られている体育館まで向かった







体育館には人が溢れていた


「ちょ、見えないよぉ~!」


「あゆみ視力いいだろ!」



中々紙が見えない私達は人込みをうろうろ


こんな時背が高ければよかったなとか後悔する



「あ、見えた!うちら7組だよ!!」


あゆみが笑顔で向かってきた


「うちらってことは…」


「3人一緒だよ!!」



そうだろうとは思っていたけど、実際にわかると安心する


これで修学旅行とか一緒に行ける!


本当は2年生で行くはずだった修学旅行は、風邪が流行して延期になってたんだ



だから本当に嬉しい!!



「あ!担任の名前見るの忘れた!」


新しい教室に向かう途中であゆみが叫んだ


3人ともクラスのことで頭がいっぱいだったから、全然気がつかなかった



「ま、どーせ田崎だろ!」


「だよねー?」



私もそう思った



だって理系クラスだし…


私達は特に何も考えずに教室へと入ったのだった






3年は2階だから、階段を上がってすぐ


しかも7組は購買が近いからとても便利


まあ、トイレが3組前だから遠いけど…



「なんか…全っ然メンバー変わってねぇな」


理奈は教室に入るなり、ため息をついた


まあ理系クラス2クラスだし、変わりようがないよね



「あ、でも知らない子もいるよ?あの辺とか」


あゆみは教室の前にたむろする女の子達に目をやった



5~6人がなにやら楽しそうに話している


…とりあえず、ギャル系な集団ではなさそう



「まあ、1年よろしくな!」


「こちらこそ」



3人で照れながら話していたら、教室のドアが開いた



入ってきたのは…



生徒か先生かわからない


童顔な笑顔…






「ほらぁ~席つけ!」




田崎先生だった





「あ!田崎くんだぁ~!!」


「また田崎くんかよ!オレ女がよかったぁ~!」



生徒の声に何やら不満げな表情の先生



てか、黒いスーツがブレザーに見えちゃうのは私だけ?



「やっぱ田崎か」


「まあ、予想通りってとこかな?」



私も内心ドキドキしてたけど、先生だってわかって安心した


よかった



また1年先生の生徒でいられ…



「…残念だが、担任はオレじゃない」








…ない?!!





クラス全員が静かになった



「…は?田崎くんじゃないわけ?」


「ああ。違う」



じゃ、じゃあ…


もしかして…



「いやぁ~遅れてすいません!担任が遅くなるなんてダメですね~!…あれ?皆さんどうしました?」





福井先生っ!?



「やったぁ~~!!福ちゃんだぁ~~」



あゆみをはじめ、女子や男子も大喜び


てか、まさかの福井先生ですか…




「おいっ!お前ら反応が違いすぎだろ!オレの立場ないじゃねーか!」



先生はシュンと小さくなった



まあ、福井先生とじゃね…



1位2位の争いだもんね




「遅くなりましたが、3年7組の担任になりました福井です。よろしくな」


「で、副担任の田崎です。今年は先生って呼んでもらえるようがんばります」



なんだか異色なコンビ…



新たな学年の始まりです







「いや~まさか副担任が田崎先生とは…。驚きでしたね~」


「あは…ははは…」



自己紹介を終えて、始業式のため体育館へと向かうオレと福井先生


教室からでてきたから自然と2人で向かうことに…



「はあ~今年はいろいろ大変ですからね~。受験とか」


「そうですね。生徒の力に少しでもなれればいいんですが…」


まあ、オレは副担任だから実際に生徒とどうこうってのはないけど…


やっぱり自分の学年だから協力したい



「田崎先生なんかの時代は今の受験体制とあまり変わってないでしょ?だからアドバイスとかしやすいですよ」



…福井先生ともあまり変わらない気もするが、あえてそこは流そう



やっぱりどこか抜けてるよなぁ…


福井先生って