「何で私なの?」

「そんなの、好きだからに決まってるでしょっ?どうでも良かったらこんなことしないよ?」

「何で好きなの?」

「君が羨ましいから。君には裏がない。どんなことにも一生懸命で、皆に優しい。僕にはなれなかった存在だから」

「嫌なことは隠さない主義だから。それに慧くんは優しい人だよ」

「でもそれはホントの僕じゃない。何時もホントの自分を隠して、優しい人を演じてただけ。誰もホントの僕なんか分かってくれない」

慧くんはそう言うと、哀しそうな顔をした。


「だったら何故、ホントの自分を隠すの?」

「そんなの決まってるでしょ?嫌われたくないからだよ」

「自分の事分かって欲しいなら、ホントの自分を見せればいいじゃない。それに隠すのって辛くない?そんなの自分が惨めな思いをするだけっ。それに慧くんが優しいの、私は知ってるよ?何時も一生懸命に頑張ってるの、私知ってるよ?皆を喜ばせようと頑張ってるの、知ってるよ?」

「そんなの、表の僕を見てるだけでしょ?それに優しい人間が、こんなことすると思う?」