「…ただ気が向いただけだから。」

「それでも嬉しかった。すごく…」


あの日のことを思い出す度、嬉しくて泣きそうになる。


「なに泣いてんの。バカみたい。」

「だって…嬉しかったし…それに…恵美ちゃんだけが気づいてくれたから…『最近元気がない』って言ってくれて、本当に嬉しかった。」

「そんなこと言ったっけ…覚えてないし…」

「恵美ちゃんが忘れても、あたしは覚えてる。たぶん死ぬまで覚えてる。」

「……」

「言葉はね、言った人より言われた人の方が覚えてるんだよ。言われたときの風景や、匂い、感情…全部あわせて『記念日』なの。」

「未来…」