わたしは理沙を見つけた。
「理沙っ…」

朝のラッシュアワーでわたしの声は理沙に届かない。

「理……理沙っ!りさぁーーっ!!!」


足は都内で一番だけど、声はちいさいんだ・・・。
こんなに声を出しても理沙には届かない。

「理沙ー…」

泣きそうになってきた…
自分が情けない。

その時、

「理沙さん!」

よく通る、低い、男らしい声。
その声に理沙もやっと気づいてこちらを向いたんだ。

「沙名!」
「理沙ー…」

もう涙声のわたしに、さっき理沙の名前を呼んでくれた人が

「よかったな!」

って微笑んでくれたんだ。
逆光でよくみえなかったけど、かっこよかったと思う。

「ありがとう!!」

そう叫んでわたしは理沙の元へ走った。