「昨夜21頃、○○町のコンビニに強盗が入りました。
強盗は金を出せ、と店員を拳銃で脅し現金を奪って現在も逃走中です。
犯人は20代の長身の男です。」
20代…長身…。
どれをとっても目の前の愛しい人にあてはまってしまう。
「だから…捕まる前に…誰かを誘拐して身代金でどこか遠くに逃げようとしたんだ…。」
ケンゴの鞄からはちらっと黒光りする拳銃がのぞいた。
「…で、も。今なら…今ならっ、まだ逃げられるよ。だから、あたしを誘拐して。ねぇ、行こうよ…ケンゴ…っ…」
ケンゴはゆっくりと首を横に振った。
「一緒に逃げられないけど…。一緒に警察に来てくれる…?」
弱弱しい声であたしの腕を取った。
「嫌だっ、ケンゴが逮捕されるなんて間違ってる!!」
あたしにはもう周りの人の目なんて気にする余裕はなかった。
周りの人がすれ違いざまにこっちをチラチラ見ているのがわかる。