キーンコーンカーンコーン……。
チャイムが鳴る。
私は、頬杖をついて窓の外を見ていた。
満開だった桜の木の枝からは、
いつの間にか若葉が顔を出し始めていた。
「……またいる」
私の目線の先にいるのは、一人の黒髪の男の子。
いつも中庭の大きな桜の木の前のベンチに座って、絵を描いている。
クラスは確か四組だから、一組の私とは無関係だ。
私の前の席に座っている麻美が、私の見ている窓の外へ目をやった。
「ああ、桜井くんね。あの人、かなりの変わり者って噂だよ」
「ふーん」
―――変わり者、か……。
私は、もう一度、彼を見つめた。
キャンバスと桜の木を交互に見つめながら、筆をリズム良く動かす。
彼はこちら側にあるキャンバスに向かっているので、
絵はどのようなものなのかは分からない。
ふいに。彼が、こちらを見た。
え、もしかして、気づかれた?
慌てて私は、視線をそらした。
もう一度、そっと彼の方を見る。今度こそ、彼と目があった。
絶対、変な人だと思われた!
穴があったら入りたいくらいの恥ずかしさ。体が硬直する。
その瞬間、彼がにこっと笑った。
え……?