星野さんとリュウヤさんは互いに、

「お前があんな言い方をするから……」

 と言い合っている。

 僕は、T・Jを皆に引き合わせた手前、その場の空気を変えようと一生懸命に喋った。

「皆、だった、何てさも昔話みたいにT・Jの事を話すけど、この僕は去年のクリスマス前に、彼の『ホワイト・クリスマス』を目の前で聴いた唯一の観客なんだぜ。
 あの時に聴いた彼の声は、ビング・クロスビーなんて目じゃない位、素敵だった」

「ありがたいお言葉だが、そんな大層なもんじゃないさ。
 アンタ達だって、ちょっと幸せな気分の時に、こう、軽くハミングしたり、歌ったりする事があるだろう?
 そういうハッピーな時に出る歌ってのは、耳を傾ける人間にもそういうふうに伝わるってだけの事さ」

「すごく、今の言葉、ここに来ちゃった」

 レナはそう言って自分の胸をとんとんと叩き、持っていた缶ビールをT・Jの缶に乾杯するような感じで軽く当てた。

 まるでそれが合図にでもなったのか、再びレナが歌い始めた。

 それは、全然僕が知らない曲で、歌詞は英語だった。