美果が先輩に今日のことを
言ったのか
高2の小柄な先輩が
衛の傍に来て

「手伝ってくれて、

ありがとう」

と礼を言って
忙しくきゅう舎の床に
敷き藁を
しき始めている。

美果の今日の仕事は
馬の餌やりだった。
リヤカーで運んだ野菜や
果物を配合飼料や牧草など
混ぜて木の桶に入れて
食べさせていた。

衛が馬に近づくと美果が

「あまり近づかないで!

噛まれるよ」

「馬って、とても神経質

だから知らない人にすごく

警戒するんだよ・・・

私でも馬を一人で触れる

ようになるまで

3ヶ月も

掛かったんだよ。それまで

先輩が手綱を持って

見守ってくれたんだ。

でも今はどの馬も、私を覚えて

くれて居るから今は大丈夫」

「それに、馬って
  
 すごく頭いいし」

「ね・・・私の愛馬これよ」

美果は顔の真ん中に
白い筋の入った
馬の首筋を触り始めた

「へ・・・美果馬持ってるの!」

衛はびっくりした。

「違うよ!競技に出るときの

馬は一人一人決められて

いるの!乗り手との

相性が一番大事だから」

「この馬ね昔は競馬場で

走っていたの、

競走馬は現役引退すると

馬肉にされるか

動物園の餌になるのが

普通なんだけど、頭がいいから

競技馬になれたの」

「そうか、このままだと俺、

頭よくないから

殺されるな!

勉強しなきゃ・・・」(笑)

「こないだの予備校模試

どうだった」

美果が尋ねた。