初めてのリヤカーの運転・・・
衛が戸惑っていると
美果が来て

「坂道だからハンドルを下に

しないと危ないよ」

と言って後ろに
行きかけながら

「それからハンドル絶対に

離さないでよ。離したら私、

リヤカーに潰されるから」

衛はリヤカーのハンドルを
少し上げ引き始めた。

やっぱり坂道はキツイ
それにジーパンと
トレナーの重ね着で
動きにくい。

5・6歩で汗が出そうに
体が熱くなった。

美果はよくこんなに重い
リヤカーを一人で
押していたと思うと関心した。

普通の女なら絶対嫌がる
筈なのに美果を
何か見直していた。

20分位で坂道を
登り終えた。

坂道を隔てて左に行けば
二人の高校右が大学だ
馬術部のきゅう舎は
大学の西側にある
美果が

「ありがとう。

ここでいいから」

と言ってきた。

しかし広い大学
きゅう舎まで
500メートルはあるのを
衛は知っていた。

「いいよ!ついでだから

きゅう舎まで行くよ」

「ほんと!ありがとう」

美果の明るい声が聞こえた。

早朝だから大学の
キャンパスは
人も疎らで在ったが
徹夜明けの
白衣を着た大学生が
リヤカーの横を通り過ぎる。

きゅう舎に着くと美果が

「馬・・見てく?」

と衛を誘った。

「え!いいの部外者以外

立ち入り禁止って

書いてあるじゃん」

と入り口の看板を指した。

「大丈夫。今日はやさしい

先輩だからそれに

私がいるし」

「じゃ・・そこの消毒液に

靴を入れて靴底を消毒して」

四角い60センチぐらいの
淵の青い洗面器に
白い消毒駅が入っていた。

靴を浸け靴底を消毒して
美果の後を付いて行った。
きゅう舎の中は
馬の体温で暑く
馬の息の音が響いていた

こんなに近くで
馬を見るのは
衛は初めてだった。