今まで学校を休んだことのない
健康優良児の娘の言葉に
お驚いた母が
部屋の中に飛び込んできた。

「どうなの!頭痛」

「寝てれば直るから!」

心配する母は

「後で病院へ行こう」

と強い口調で夢子に言った。

まさか恋の病だと母に
言えない夢子は・・

「大丈夫!よくなったから

 学校へ行くから」

夢子は制服に着替えて
家を出て行った。

三茶から電車に乗り
乗り換えの京王線
下高井戸の駅へ

電車の中では
夢子は、死んだように
落ち込んで
このまま京王線の電車に
飛び込んで死んで
仕舞いたい!
そんな事を考えていた。

新宿とは反対方向へ行く
下りのホームは閑散として
鳩がホームで餌を拾っていた。

いつもより多い鳩の数だ!

誰かが鳩にパンくずをやっていた
からだった。

失恋の痛手で思考が希薄な
夢子は鳩の餌を啄ばむ姿を
ボート眺めていた。

鳩はいいな!
恋なんかしないだろうし?

そんな事を考えて鳩に
餌を与えている人を
見て!

夢子は心臓が止まる
ほど驚き!
暫らく声が出なかった!

「夢子!おはよう!」

翔の声が
夢子を我に返えした。

翔の透き通った声が
夢子の荒んだ心を
溶かした。

「翔!」と大きな声を上げ
パンくずを啄ばむ鳩を
散らして翔の座っている!

ベンチに走りより
翔の身体にボディアタック

翔の身体は夢子の柔らかな
身体で揺れ動く!

その弾みで夢子の唇が
翔の頬に触れた。