千裟は一人病院の
待合室で
本を読んでいた。

消灯時間が過ぎ病室で
電気を点けていると
他の人の迷惑になる為
いつもの習慣で
この場所にいる

入院してから不眠症に
成っていた。

薄暗い廊下の向こう側から
足音が聞こえる。
看護士さんかな?

「千裟!」 と呼ぶ声

桃香の声だ!

「見舞い、遅くなって

   ごめん!」

千裟の好きなカスミソウを
持って桃香が近づいてきた。

入院する前は、メールで
近況を報告していたが、
病院では携帯は
電源を切らなければ
ならない。

それに、高校に入ってからは
桃香の仕事が忙しくなって
会って話をするのは
2年振りだ。

「ごめん!仕事が遅くなって

こんな時間に」

それに答えて千裟は

「仕事忙しいのに、わざわざ

 ありがとう!」

桃香は少し痩せた千裟をみて

「身体!大丈夫?」

「だるさが、少しあるけど

   大丈夫!」

千裟は桃香に心配させない様
答えた。

「今日!翔を見たんだ!」

「本当!どこで見たの!」

「よみうりランドでね!

 女の人と一緒だったよ」

「うそ!だって今まで

 彼女なんかいなかったよ」

桃香はうつろな顔で

「その女の人がね!

 私の学校の友達

の親友なんだって?」

「友達は美果って言うんだ」

千裟はビックリした。

「その人!

 朝比奈美果さん?」