観客の人たちが
テレビより綺麗と口々に
言っている。

テレビは横に膨らんで
映るので少し太って見える。

夢子は翔や美果がアイドルの
友達なのを、うらやましく！

「翔！桃香さんと幼馴染でしょう！

　　　どんな人なの？」

「ふつうの人！」

翔はそっけなく、応えた。

＊桃香は罪を一つ犯している＊

中2の時、父の友人の
プロダクションの
社長から芸能界へ入る事を
薦められ
決心した時の事である。

それは2月の真冬の
寒い日であった。

映画を見ての帰り道
日が落ちた
公園の前に来た時
桃香は立ち止まり公園へ
翔を誘った。

公園のベンチの前で桃香は！

「翔！私、芸能界へ入る事が

決まったの・・・」

「すごいね！俺、

　応援するから！」

「ありがとう」桃香は

そう言って寂しく言い出した。

「だから、これから、

そんなに会えなくなるんだ」

翔は、その言葉が
何を意味するか判った。

芸能界に入る場合、
恋愛禁止が当たり前で
特に有名になると
一度も話した事のない人が
友達だと言ったり、

悪質なのは
少し話をしただけなのに
元カノだと言って
自慢する男だ。

増して、写メなど
一緒に撮った
写真などあれば最悪だ。

週刊誌に売りお金に換える
男が多い。

その為、桃香は翔としばらく
別れなければならない。

真冬の冷たい風が
二人の間を
判っているように
吹き抜けていく。

桃香は翔の前にそっと立ち
目を閉じた！

翔は桃香の唇に
自分の唇を重ねた。

２人とも初めてのキス！

そんな別れを桃香はしたのだ。

いっそ！！！

「あなたが邪魔だから

　別れて！」と言って

別れたほうが
翔をこれほど傷つけなかった。

翔には今でも・・
あの時の桃香の
柔らかで暖かい！

桃香の唇が
脳裏に残る。