「んじゃ、案内してやるよ」


笑い終わった後、そう言うと足早に歩きだしたヤツ。


慌てて後を追いかけながらポケットから絆創膏を取り出してキスマークをつけられたところに貼付ける。


これで…一応はいいかな。


「ココ。んじゃあな」


それだけ言い残してヤツは去ろうとした。


「あ、」


数メートル歩いたところで立ち止まり、こちらに振り向いた。


「俺の名前は暁槻綾(あきつき りょう)」


え? 今頃名乗るの?


「おまえの名前は?」


「琶荊…魅夜です」


「魅夜…ね。 覚えといてやるよ」


そう言い、今度こそ去って行った。


暁槻…綾。


表は爽やかで人の良い好青年。 裏は俺様で意地悪な強引男。


これが━━━綾との出会いだった。