ふと白衣の胸ポケットから名札が見えた。


「藤城…燐(ふじしろ りん)?」


声にだして読み上げてしまった。

「そうですよ。よく間違えずに読めましたね…って入試トップの人だから簡単ですか?」


…嫌味のつもりなんでしょうか?

無言でいると


「別に呼び捨てで構わないけど?ただし、呼び捨ては二人っきりのとき限定で」


と言われた。


了解〜…って!!


「ぇえ!?」


またしても二重人格?
いや…教師だから猫を被ってる、とか?
(↑同じ意味かっ)


「不満なら別にいいけど?」


顔は笑顔だが、瞳は笑っていない。
逆にそこが怖い…。


「いや、呼び捨てでホントにいいのかなって思いまして…」


慌てて弁解をする。


「ダメだったら言ってない。あと、二人っきりのときに敬語、ナシな」


はぁ…。


とりあえず頷いておく。


「あ、だったら…あたしのことも好きに読んで?」


なんで最後が疑問文になったのか自分でも分からない。


「だったら…魅夜って呼ぶな」


それだけを言われただけなのに体温が一気に上昇した気がした。


燐との出会いは━━━甘くて……溶かされるよう熱さを含んでいた━━━。