「沙也!・・・沙也、沙也!」
「あ・・・!え、あ、ごめん・・・。ぼうっとしてた・・・」
「ああ、なんか『心ここにあらず』って感じだった」

直樹君が苦笑する。しまった、ずっと田中さんのことを考えていて気付かなかった。・・・田中さんマジックだ。田中さんは、人の心は掻き乱す。

「あ、あのさ・・・これ・・・。ごめんな、高校生になって、しかも誕生日に金平糖とか・・・」
「金平糖・・・?中身見ても良いかな」
「あ、ああ・・・」

可愛らしい銀色の丸い缶を受け取り、その蓋を開けると、『桃色』『水色』『白色』『黄色』『黄緑色』『橙色』のカラフルな金平糖があった。色んな色があって、キラキラしていて、とても可愛かった。
金平糖なんて、唯の砂糖で出来た物らしいけど、子供の頃からこれは好きだった。正体が分かっても、それでもまだ好きだった。夢が詰まっている気がしたから。

「可愛い・・・っ!私、金平糖大好きなんだ。ありがとう、直樹君!」
「よ、喜んでくれたなら・・・それで良いけど」
「うん!本当に、ありがとう!」

沢山お礼を言うと、直樹君は照れくさそうに頬を掻く。その後も、私はずっとありがとうと言っていた。
これは、大切にしよう。食べ物だから、いつかは食べないといけないけれど。それでも、直樹君から初めて貰った物だから。

心があったかくなった。