先程の田中さんの言葉が頭を支配している。『沙也ちゃんのことだからね』って、どういう意味?
田中さんの声が、ずっと、頭の中で木霊している。期待してはいけない。揺さぶられてはいけない。私は、直樹君が好きなんだ。

携帯を取り出して、直樹君にメールをする。電話をしたほうが良いんだろうけど、私は生憎電話番号を知らない。・・・今度訊こうかな。
直樹君とは、今から会うことになっていて、マックの近くで会おうということになっていた。よく直樹君が行くらしい。

それから、直樹君が私に呼びかけるまで、私はずっと田中さんのことを考えていた。
田中さんは何を考えているんだろうか。田中さんはなんで私にこれをくれたんだろうか。田中さんはなんで私の誕生日を知っていたのか。田中さんは誰から教えてもらったんだろうか。

ずっと、田中さんに頭を支配される。
そこで頭を振って、田中さんを消そうとする。でも、出来ない。先程の言葉の意味が知りたい。分からないから。でも、田中さんで埋め尽くされるのは嫌だった。

田中さんにふらつきそうになる自分が嫌だった。