何だかんだ言って、楽しかった。あの後も、街をブラブラしたりして、他愛無い話をしながら笑った。
そんな楽しい時間は過ぎるのが早く、気付けば16時になっていた。私は、慌てて田中さんにもう時間だと告げると、田中さんは驚愕の顔をしてから、「そんな時間か・・・」と小さく呟いた。

「田中さん、今日はありがとうございました」
「いやー、別に良いんだよ。たった1時間だったけど、沙也ちゃんの誕生日を一緒に過ごせたし」

そのまま去ろうとした足が、止まった。「さようなら」と続く筈だった言葉は、「なんで、今日が私の誕生日だって知ってるんですか!?」という言葉に変わってしまった。
思わず、ずずいっと田中さんにつめよると、田中さんは愉快そうに笑って、意味深な言葉を残して、私の頭を撫でて去って行った。


「だって、沙也ちゃんのことだからね」