「ああ、やっぱり・・・。沙也ちゃんにはピンクが似合うね。可愛いよ」
「あの・・・、2万円以上したし、高いから・・・。その・・・」

確かに可愛い。だけど、こんな高い物、受け取れない。それにこれは、真ん中に小さなダイヤが埋め込まれている。高校生がこんなもの持っていていいのかな。
何より、私は田中さんの彼女ではない。こういうのは、彼女にあげるものなのに。

「なあに?受け取れないとか言わないでよ。これは俺の気持ち」
「え・・・?でも、こういうのって、彼女さんとかにしてあげたら良いんじゃ・・・」

ペアリングって、恋人同士がする物だと思う。・・・だとしたら、なんで私はそれを貰っているんだろう。分け分かんなくなってきた・・・。
軽く眉間に皺を寄せながら田中さんを見ると、田中さんはいつしかのようにふきだした。そして、声を上げて大爆笑。ずっと、「アハハハハハ!!」と言っている。・・・途切れがないんだけど、息継ぎとかどうしてるんだ。

「あー、笑った」
「大丈夫ですか?」
「ああ、うん。全然大丈夫」

目元に涙を溜めて、それでも微かに笑っている田中さん。口元は弧を描き続けている。
そして、ふいに真顔に戻って、見つめられる。
どうしたのだろうかと思い、「田中さん?」と言おうと口を開いた瞬間、田中さんがそれを遮り声を出す。


「俺、彼女いないよ?」