だ、誰?

男だってのは分かるんだけど・・・

顔は見えない。

勢いよく振り返ったせいで、眼鏡が男の足元に飛んでいってしまったのだ。

カツン、と軽い音が沈黙の中、響いた。



「何をって聞いてるんだけど」



声を聞くと、返事をしないあたしに不機嫌らしい。

さっきよりも低くなってる。



「えっと・・・寮を・・・3つ目の寮を探してるんです」



「3つ目?ああ、俺らの部屋か」



“俺らの部屋”?

いや、あなたの部屋なんかじゃなくて、案内に書いてない寮を探してるんだけど。

何言ってるの、この人。

あー、眼鏡がないからどんな顔してるのか見えないよ。

眼鏡取りに行きたいけど、あの人がいるし・・・。

どうしよぉ・・・。

男の言った事は今はもうどうでもよく、眼鏡が心配になってきた。

これでもかッて程、目を細めてアピールするあたし。

すると、ぼやける視界で男がしゃがんだのが分かった。



「あ?コレお前の眼鏡か?」



男はそう言いながら近づいてきた。

そうッ

それはあたしの眼―――・・・



「だせぇな、コレ。こんなの付けてるのか」