「サクラ、聞いて
 
 俺達の事ぐらいで
 家族の関係が壊れたり
 しないさ

 そんな、柔な関係じゃない
 大丈夫だよ」

「だけど、私、不安だよ」

「もしも、万が一
 壊れてしまったとしても
 俺達の愛が本物だって事が
 分かれば、いつか必ず
 父さんも母さんも
 アニキだって分かってくれる
 許してくれるさ」

「そうかなぁ」

「ああ」

うん、そうかもしれない。

もしも、今はまだ
許してもらえなくても

私達の愛が本物だって
事、年月を掛けてでも
証明できれば

いつかきっと
分かってくれる。
「サクラ
 もう、何も心配するな
 
 どうなろうと
 俺がお前を守ってやる
 
 だから、泣くなよ」 

私は、どう足掻いたって
槇への想いを捨てること
できない。

できないよ・・・

私は、槇の胸に甘える。

「マキ・・・
 
 貴方さえ
 傍に居てくれれば
 それでいいよ」

私達は、いったい何度
赤色から青色へと変わる
信号を見過ごした事だろう。

今の私、槇の腕に抱かれて
心から幸せだ。

もう、これで不安な想いは
消えて無くなるはず・・・?
「サクラ、行こう」

貴方の手に引かれて
私は、チカチカと

今にも赤信号に変わろうと
している横断歩道を渡る。

渡り終えた後

信号が赤色に変わる。

「ふう、間に合ったぁ」

そう言って、見上げた
私の唇を奪うのは、貴方。

甘い口づけに

私は酔いしれる。

もう
誰に見られても構わない。

誰に知られても構わない。

私達は、血が繋がらない

兄と妹・・・

愛し合うこと

誰にも、邪魔させない。

不安は消える・・・?
いつもよりも
うんと、早い時間

私達は、手を繋いで
学校まで続く道のりを
時間をかけて、ゆっくりと歩く

風が吹くと、私の制服の
スカートがヒラヒラと揺れる。

朝の香り・・・

とっても、心地よい。

あれから、槇は何も話さない。

だけど、それを
不安に思ったりしない。

だって私は
無口な槇が好きだから

槇と過ごす、静かな時を
退屈に思った事なんて無い。

槇の横顔を、私が見つめると
貴方は、すぐに見つめ返して
くれる。
言葉なんていらない・・・

繋ぐ手、絡み合う指から
槇を感じる。

静かな時を遮る
槇の声・・・

「もう、限界」

コンビニの前で、槇の
歩む足が止まった。

「マキ?」

お腹を押さえる、槇。

「お腹、痛いの?」

「違う
 
 サクラのせいで
 朝飯食い損ねたから
 腹減って死ぬ」

「えっ、ごめん」

槇は、私の頭に手を置いたかと
思うと、ポンと一度だけ叩いた

「サクラ、お前は
 ここで待ってろ」
そう言って、貴方は
慌ててコンビニ内へと
入って行った。

「いらっしゃいませ」

私は、コンビニ店の中を
外から覗いて、槇の姿を
探す。

すると槇は、ジュースを
二つ手に取り、おにぎり
コーナーへ。

「ありがとうございました」

店から出てくる槇は
指差す。

「サクラ、あそこの公園で
 朝飯、食べよう」

貴方が、指差す方向には
いつも、待ち合わせ場所に
使っている公園よりも
ずっと小さい公園があった。
槇の腕が伸び、その手が
探すのは、私の手。

指先が触れたかと思うと
優しく繋がれる。

私達は、また
手を繋いで歩く。

槇の買い物袋の中を覗く私。

「辛子明太子、買った?
 鮭は?後、おかかも」

この三つは、槇が大好きな
おにぎりの具。

「もちろん、買った
 
 サクラは、海老マヨと
 とり五目」

「朝から、二個も
 食べれるかなぁ?」

「残したら
 俺が食ってやる」

「うん」
私達は、滑り台だけが
置かれている小さな公園で
朝ご飯・・・
おにぎりを食べる。

「マキ、美味しい?」

「ああ

 母さんに悪い事したな
 朝飯・・・」

「そうだね・・・」

私は、とり五目おにぎりを
食べながら辺りを見渡す。

「こんなところに
 公園があったんだぁ

 知らなかったね」

「ああ」

お腹が満たされた貴方は
包み紙を、買い物袋に捨て
ペットボトルの蓋を開けて
ジュースをゴクゴクと飲む。

そして、唇を手の甲で拭う。
「マキ・・・

 オリグチさん
 何か言ってた?」

『貴方の想いや
 彼女の想いなんて
 どうでもいい
 
 私は、彼女から
 どうしても
 貴方を取り返したい
 彼女にだけは渡したくない』

『彼女(桜)との未来に
 何があるの?』

「オリグチの事は俺に任せて
 何度でも話して分かって
 もらう・・・
 
 お前は
 何も心配しなくていい」

貴方は、冷たいジュースを
私の頬に当てた。

「冷たいよ、マキ」

貴方は、悪戯っ子のように
微笑む。